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掌のオーロラ/ Aurora on the Palm
(HD/7min/2010)

●クリスマスの一週間前に天からやってきた仔猫は、二年後のクリスマスの一週間後に還っていった。暢気でおっちょこちょいの彼にはもう会えない。喪失と絶望の中から、生まれてきたこと、出会えたことを祝福したい。像の崩れた自家現像モノクロ16ミリフィルムはやがて胎動へと変化する。
おやすみ、良い夢を。


●頂き物のプリント用16ミリモノクロフィルム
を、頂き物のボレックスカメラに装填、お借りしたレンズを猫の顔に向け、いつものように手持ちバルブ撮影。キャンプしながらの現像ワークショップで現像液をお借りして現像。データなしで現像したら像が出ない。25フィートずつ4回に分けて行った現像の3回目でようやく適正に達した。フィルムエンドから現像を開始したので、フィルムを順に繋ぐと徐々に像が失われていく展開に。栗林の地面を掘って作られた地下の上映室にスクリーンを立て、その場で映写しビデオで撮影。旧い映写機はリールが歪み、擦れて異音を放ちながら回っていた。その音を低速度再生し、ハミングとミックスしてサウンドトラックとした。


●当初は撮影を継続するつもりだったが、出演の愛猫が事故で他界。さまざまな出会いで生まれ、残された100フィートのこのフィルムは、私の部屋で生まれ、たった2年で去っていった彼そのもののようにいとおしい。このフィルムの持つ時間をビデオ上でスローモーションとして引き伸ばし、新たな時間を与え作品化した。像は喪われ、形は崩れてゆくなかで、曖昧な光のゆらめきに還元されてゆく。私もいつか、この世界はいつか、こんな光のゆらめきにかえってゆくのだろう。

 

第15回イフラヴァ国際ドキュメンタリー映画祭/Fascinationsプログラム
<2011年10月25-30日、チェコ・イフラヴァ>

天地人VII 蒼の雲 クラウディアブルー 
<2010年、茨城県水戸市/長崎県波佐見町>

予告篇(60秒)

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