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長瀞の旅 Nagatoro
(8mmフィルム/4.5min/2021)

●あれはいつだったか 夏の終わりに長瀞で過ごした楽しい一日
その光と時間を刻み込んだ8ミリフィルム
記憶もディティールも反射する光に溶けゆく夢

●2017年秋に秩父でのゼミ合宿にカメラを携え、長瀞の川下りや宝登山登山の風景や人々を、手持ちバルブ撮影によって描写した。撮影時は現場の空気感を、抽象的な画像の中に記録しようとしたのだが、現在コロナ禍の中にあって、活動が制限され続けている現実からみると、ほんの数年前のこんな日常が、まるで夢の中のようだ。
この素材を編集によって再構成し、鉄と木の素朴な響きを生む楽器、ムビラの音によるサウンドトラックの作成、16FPSによる映写(後述)によって2021年の感慨を表現した。
前述の16ミリカメラ(BOLEX)用レンズ、SWITAR 10mm f1.6を、同じくCマウントを採用するSingle-8規格のカメラ、FUJICA ZC-1000に装着。極小フィルムサイズである8ミリフィルムを用いることで、本来は広角域である10mmレンズが35mmフィルムサイズ換算で61mm相当というやや望遠よりの標準レンズに近い画角となった。

●また本作品では「16FPS映写」という試みも行った。
肉眼はスキャンや間欠刺激による仕組みを持たないが、擬制の視覚たる映像にはそれがある。“FPS”(フレーム数/秒)による視覚は肉眼にはない“映像独自の質感”といえるだろう。映画技術の黎明期にはシャッターの開閉が自覚されないギリギリの値として、映写機の上映速度として16FPSが採用された。現在、60pといった高FPS、高解像度の所謂「ヌルヌル動く」、肉眼感覚に近いデジタル映像が普通になっていく中、低いFPSや粒状性の粗い、サイズの小さなフィルム、これらは“映像独自の質感”をより強く感じることのできるメディアと考えることができる。この質感をより強く表現するため、また、フィルム映画技術へのオマージュという意味合いも込めて、このFPSを選択した。

●external sound / 16fps
Fujica ZC1000 / Switar 10mm F1.7

 

「POST COVID-19 個人映像主義宣言」
<2021年8月21日/東京・宮地楽器ホール>



作品プレビュー

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