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psyche-connector1/2
(Device/1989,1990)

●プシュケ・コネクター。
psycheとはギリシア神話に出てくる美少女の名前で、霊魂、蝶の象徴とされる。
psyche-connectorとは「霊魂と身体を接続するもの」という意味を持つ。

●自分は、どこにいるのか。
知覚器官によってこの世界を感じている自分は、身体の中のどこに存在するのか?

●「psyche-connector1」の目標は、「知覚器官のリモート(遠隔)化」「リアルタイムビデオ映像による立体視」である。
知覚感覚が身体から抜け出すと、一体どうなるのか?という興味から作られたこの装置は、言い換えれば幽体離脱を擬似的に体験させるものということもできる。

●装置は2つのユニットとそれを繋ぐ10メートルの信号ケーブルによって構成される。

・知覚ユニット:2台のビデオカメラを三脚・ドリーに設置し、その上にダミーヘッド(マネキンの頭部に吸音材を充填)を固定したもの。
ダミーヘッドの左右の耳穴にはそれぞれマイクを埋め込んであり、バイノーラル方式の立体音像を得ることできる。またダミーヘッドの口蓋内にはスピーカーが仕込んである。

・受容ユニット:ビデオカメラのビューファインダーを利用した自作の立体視ファインダーとステレオイヤホン、指示用マイクを組み込んだヘルメット状のHMDユニット。
体験者の頭部を完全に覆い隠し、通常の知覚を外部から遮断する役目も持つ。

●「体験者」は受容ユニットを装着し、木陰に置いた安楽椅子に身を横たえる。
信号ケーブルを介して10メートル先の知覚ユニットは「オペレータ」がカメラ移動などの操作を行う。
体験者とオペレータは、知覚ユニット(ダミーヘッド)のバイノーラルマイク・スピーカと、受容ユニット(ヘルメット)のヘッドフォン・内蔵マイクを通してコミュケートし、体験者はオペレータに移動等の指示を与える。
体験に際してはコンピュータステレオグラムを用いた裸眼立体視の要領で、立体視ファインダー内に見える両眼の対象を一つに「融像」させる。
融像が成功したらオペレータに移動を指示し、自由に移動感覚を楽しむ。

● 翌年制作した「psyche-connector2」では10メートルの距離を最小限に縮め、ビデオステレオ世界の中を「自分の身体」で自在に歩き回ることをコンセプトとした。

いわば夢遊病感覚の疑似体験、ということができるかもしれない。

●自らの肉眼もまた、一つの「視覚装置」に過ぎない。
それを逆説的に体感するための装置。

 

 
(C) Kawaguchi Hajime